Column コラム

あなたは外向的?内向的?違いと特徴をご紹介!

定義

1924年に心理学者のカール・ユングが『タイプ論』という書物を刊行しました。
外向型及び内向型という言葉を軸に 人間の性格理論を明らかにした名著です。ユングによれば、外向型性格の傾向の強い(以下、外向型という)人間は行為の対象を自分でない外部に置く傾向が強く、その結果外部の人々及び活動に与える影響が強いとされます。分かりやすい例でいうとアメリカ東部の名門大学出身に多い社交性に富んだリーダーシップを発揮するような人物を指します。

これに対し、内向型性格の傾向が強い人(以下、内向型という)は自己の内部の思考や感情に心惹かれる傾向が強いとされます。自分の世界に浸り込みゾーンに入り独創的な世界を作り上げていくような人物をいいます。

世間一般的には外向型の人が組織の中では有利と考えられてきました。事実、1940年代のハーバート大学のロースクールやビジネススクールでは、外向型性格の人を優先的に採用するべきと当時のポール・バック学長は言明しています。その内容は、「繊細で神経質」な「頭でっかち」の学生よりも、単に「健康的で外向的な」な学生を採るというもので、具体的で明確な根拠はありません。
外向型は何につけても積極的で、リーダーシップがあると思われているのです。ビジネス界も外向型を好む傾向が多々見受けられます。このように圧倒的に不利と思われる内向型は人生で成功する可能性はあるのでしょうか。

試しに、以下の人たちの共通点を探してみましょう。
1. 重力理論のアイザック・ニュートン
2. 相対性理論のアルベルト・アインシュタイン
3. 失われた時を求めてのマルセル・プルースト
4. ピータパンのJ・M・バリー
5. 作曲家兼ピアニストのショパン
6. 映画監督のスティーヴン・スピルバーグ
7. Googleのラリー・ペイジ
8. ハリーポッターのJ・K・ローリング

上記のほかに、ダーウィンの進化論、ゴッホのひまわり、Macのパソコンに至るまで、偉大なアイディア、美術や発明は自分の内的世界に耳を傾け、そこに秘められたものをみつける術を知る内向型の人間によって成し遂げられたものです。性格の違いで生き方も大きく影響を与えるので、自分の性格が外向型か内向型かを知ることは、人生を生きる術を知ることになり重要です。

あなたはどちらの傾向が強い?外向型・内向型チェック

さて、皆さんはどちらの傾向が強いでしょうか。判断するのに簡単な質問を用意しましたのでチェックしてみてください。

① グループよりも1対1の会話を好む
② 文章の方が自分を表現し易いことが多い
③ ひとりでいる時間を楽しめる
④ 周りの人に比べて、他人の財産や名声や地位にそれほど興味が無いようだ
⑤ 内容のない世間話は好まないが、関心のある話題について深く話会うのは好きだ
⑥ 聞き上手だと言われる
⑦ 大きなリスクは冒さない
⑧ 邪魔されず没頭できる
⑨ 誕生日はごく親しい友人一人か二人でけれど、あるいは家族だけで祝いたい
⑩ 物静かだ、落ち着いていると言われる
⑪ 仕事や作品が完成するまで、他人に見せたり意見を求めたりしない
⑫ 他人と衝突するのは嫌いだ
⑬ 独力での作業に最大限に実力を発揮する
⑭ 考えてから話す傾向がある
⑮ 外出して活動した後は、楽しい体験であっても、消耗したと感じる
⑯ もし、どちらか選べというなら、忙しすぎる週末よりもすることのない週末を選ぶ
⑰ かかってきた電話をボイスメールに回すことがある
⑱ 一度に複数のことをするのは楽しめない
⑲ 集中するのは簡単だ
⑳ 授業を受ける時はセミナーよりも講義形式が好きだ

該当する項目が多ければ多いほど内向型になります。完全な内向型や外向型はいません。両向型も存在します。ユングのタイプ論によれば人間の性格はいろいろな要素の組み合わせから成り立っており、それ故ここでは冒頭で「傾向が強い」という言い方をしております。それぞれのタイプに別の性格を構成する要素が入り込むことは間々あるからです。

行動パターンと特徴

外向型性格

外向型の特徴は意気健康、明るい、愛想がいい、社交的、興奮し易い、支配的、積極的、活動的、リスクを取る、鈍感、外部思考が強い、陽気、大胆、スポットライトを浴びるのが好きといったところです。

誤解がないように言えばこれらのうち一部は印象が良くないものも含まれますが決して悪口はではありません。むしろ、学校やビジネスの世界では好まれる人物像です。

素早く行動しつつ同時に複数のことをこなし、積極的にリスクを取りに行くことはビジネスの世界では求められる人物像です。しかし、金銭や地位などの報酬を求める承認欲求が強いのも外向型の特徴です。
このことから、ディナーパーティに活気をもたらし、誰かの面白くもないジョークに大声で笑ってあげ、積極的で、主導的で、仲間を強く求め、孤独は嫌いな性格が典型的な外向型です。ただし内向的な性格がここに一部入り込むことは十分にあります。

内向型性格

内向型の特徴は思慮深い、理性的、学問好き、控えめ、繊細、思いやりがある、まじめ、瞑想的、神秘的、内省的、内部思考が強い、丁重である、穏やか、謙虚、孤独を求める、内気、リスク回避的、神経過敏などの言葉が当てはまります。

ゆっくりと慎重に行動することが多く、一度にひとつの作業に集中するのを好み、素晴らしい集中力を発揮できる人間です。そして富や名声はあまり欲しがらない性格です。
社交スキルが豊かでパーティは仕事の付き合いを楽しむ人もいるにはいるが、しばらくすると、家でパジャマ姿になりたいと思うタイプが多いのも特徴です。

限られた親しい友人や同僚、家族との関係に全エネルギーを注ぎたいと思っています。喋るよりも聴くほうを好み、ゆっくり考えてから喋り、会話よりも書く方が自分をうまく表現できると感じることが多い性格です。このほか衝突を嫌う傾向があります。無駄話にはぞっとするが、深い対話を楽しむという性格が典型的な例です。ここに外向的な性格が一部入り込むことは十分にあります。

互いにどのように相手を感じているのか

外向型の人と内向型の人が意見を交換するとどうなるのでしょうか。
極論な例になりますが、外向型の人から内向型の人を見た印象は、「はっきりものを言わないウジウジした性格で、何か隠しもっているのか」と感じてしまいます。
また、内向型の人から外向型の人を見ると「明確な根拠なしに軽薄に意見を言っている」と感じます。そして多くの場合、議論の主導権は外向型の人が握る場面が多いです。
しかし、粘り強い交渉や長期間に亘る交渉に関しては内向型の人が終盤に大逆転をすることが多々あります。

リーダーシップにはどちらが向いているのか

ハーバートビジネススクール(HBS)ではリーダーのあるべき姿として「雄弁家であるべき」と考えています。
これはHBSのクイン・ミルズ教授の言葉です。基本的にビジネスでは集団で行動する場合が多くリーダーは外向型の人間が求められると考えているのです。雄弁さが洞察力の深さと相関しているならば、何の問題もありませんが、そんな相関関係はありません。HBSが推奨した声高なリーダーシップ・モデルと対照的に、21世紀現代のCEOの中には内向的な人物が多いのです。例えばアメリカを代表する実業家のシャールズ・シュワブ、ビル・ゲイツ、世界最大のアパレルメーカのCEOだったブレンダ・バーンなどです。彼らの共通点は「カリスマ的才能」を全く、あるいは少ししか持っておらず、それを利用することもなかったとピーター・ドラッカーは言っています。これを裏付けるようにブリガムヤング大学の経営学教授のブラッドリー・エイグルは大手企業128社のCEOを調べた結果、重役たちからカリスマ的だとみなされている人物は、そうでない人物と比較して給料は多いが経営手腕は優れていないことを発見し、ドラッガーの主張を裏付けました。

CEOに必要な資質は、以下に集約できると言われます。
① 実務能力があること
② リスク管理能力があること
③ 自分の成功譚(サクセスストーリー)にとらわれない
④ 自慢話をしない

以上の点からすると、外向的な人間よりも内向的な人間の方がリーダとして向いているかもしれません。ただし、断定はできません。外向型のリーダーは、部下が受動的なタイプであるときに集団のパフォーマンスを向上させ、内向型のリーダーは、部下がイニシアチブを取る能動的なタイプの時にはより効率的であると言われているからです。チームが受動的か能動的かで求めるリーダー像は異なると考えられるからです。

一般のリーダー論にありがちなワンパターンな考え方を一変させるもので興味ある考察です。チームの構成を見て必要なリーダーを決めることもできるのです。リーダーが決まり、その後、チームが決まるという従来と逆のパターンで組織を作るというものです。それゆえプロジェクトを任せるリーダーが外向的であるか内向的であるかを上司が知ることは大事です。

外向型及び内向型の性格が、共同作業の効率性に与える影響とは

カリフォルニア大学バークレー校の研究者が創造性に関する研究をしました。優れた業績を残した人物たちなど(建築家、数学者、科学者、エンジニア、作家)のリストを作成し性格検査や問題解決実験を実施し特定の質問をしたのです。また、反対にそれほど成果を上げていない人々を集めて同じ検査や実験を行いました。そこでの興味深い点は、素晴らしい創造性に富んだ人材は内向型の人間が多いということでした。内向型の人間が単独作業を好み、孤独が革新の触媒となっているという事実が発見されました。これはチームで仕事をしている現在ではアンチテーゼとなります。共同作業をすることにより内向型の人間の意見が外向型の人間より排除されたり、革新性が理解されない場合があるからです。

共同作業の効率性については、
①集団で仕事をすると、他人任せで努力をしない人物がでてくる。
②共同作業の中で発言やアイディアを出すのは一人で他のメンバーは話を聴くだけになる。意思統一をする名目で同化が始まる。
③他者の前で評価されないのではと考える。

このように共同作業が創造性を潰すのです。この点を経営者は十分に認識しなければなりません。

それぞれの人間の求めるもの

外向型人間は報酬について過敏であり、対照的に内向型人間は警告信号に注意を払うと言います。内向型人間は欲望や興奮といった感情を調節するのが上手です。また、内向型人間は計画を立てることがうまく、立てた計画を着実に達成できることが多いのです。結論論的に言えば、外向型人間は人付き合いが本能的に心地良いので社交的に振る舞い、故に経済的にも政治的にも内向型人間よりも大きな野心を持っているのです。

2008年のリーマンショックの大暴落はなぜ起こったのでしょうか。当時の金融機関や格付会社は十分なリスク計算もせず、闇雲に金儲けに走った外向型の人間が多かったという推察が一般的になされています。
また、この時トリプルAの債権がただのゴミの集まりで早晩破綻する可能性が高いと見破り、大手銀行にあり得ないと言われながら保険をかけ巨額の富を築いた伝説的な人間たちは内向型の人間が多かったのも事実です。

内向型の人間は外向型の人間よりも行動するまえに注意深く考え、情報を綿密に消化し、時間をかけて問題解決に取り組み、簡単に諦めず、より正確に作業をするのです。このことから、集団で物事を判断するときや問題を解決しようとする時、外向型人間は内向型人間の意見に耳を傾けるのがいいと言われています。

内向型の人間と外向型の人間の注意する項目に違いはあるのか

内向型はぼんやりと座って思考を巡らせ、イメージし、過去の出来事を思い出し、未来の計画を立て、外向型は周囲で起きていることにもっと目を向けるようにすることが必要です。
あたかも、外向型は「これはなんだろう…」と見ているのに対し、内向型は「もし…したら、どうなるのだろう」と考えているのです。複雑なジグゾーパズルを完成するのは内向型が得意ということになります。

最後に

対人関係に愛情は必要不可欠ですが、社交性は必要最小限でかまいません。身近にいる大切な人々を慈しみましょう。あなたが好意を持ち、尊敬する人と働きましょう。誰かと出会ったら、相手がそうゆう人なのかどうか、一緒にいて楽しい人かどうかを見極めましょう。そしてそうでないと分かったら、表面的な付き合いにあれこれと気を配る必要はありません。

人付き合いは内向型も含めてみんなを幸福にするけれど、内向型は量よりも質を大事にします。人生をうまくやる秘訣は、適正な明かりのなかに自分を置くことです。持続力、集中力、洞察力、繊細さといった、自分に自然に備わっている力を発揮して、愛着を感じられ自分が大切だと思う仕事をしましょう。そして「集団思考」が持つ危険を忘れずに、全員でアイディアを分かち合うように組織に指示しましょう。これが外向型及び内向型人間がともに人生をうまくやる秘訣です。

参考図書

内向型人間の時代byスーザン・ケイン
内向型人間のすごい力byスーザン・ケイン
内向型人間が無理をせず幸せになる唯一の方法byスーザン・ケイン
タイプ論byカール・ユング